御大祭の記録:宮司挨拶

明日から霜月、11月を迎えます。

今月は(10月)15日(土曜)16日(日曜)の御大祭を無事ご奉仕でき、安堵した次第です。
特に16日(日曜)の例祭献幣式(れいさいけんぺいしき)は当大神宮の最重儀で、大勢のお客さまを迎えてご奉仕申し上げることが出来ました。

様子はこちらのアルバムにてご覧頂けます。

例祭献幣式(れいさいけんぺいしき):宮司挨拶

折角ですので、祭典の終了後皆さまにお話した内容を、備忘もかねて記しておきたいと思います。

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当大神宮では、平成14年に伊勢神宮さまから「伊勢光」という品種の稲種を拝領、栽培して神宮さまの神嘗祭(かんなめさい)に献穀させて頂いており、それを本日の神饌(しんせん:神さまのお食事)でも調理してお供えし、加えて白米と抜穂(ぬきほ)もお供えしております。

今回は「稲」ついて申し上げます。

『和稲・荒稲』 : 和稲=にぎしね 荒稲=あらしね という言葉をお聞きになったことはございますか?
稲は神話の昔から今日まで、一貫して日本人の命と直結している穀類であり、日本を象徴する主食です。

「和稲」とは白米のこと、「荒稲」とは籾のことです。
白米は調理する事によって、人の命を繋ぐことができ「生きる糧」となります。
かたや籾は、そのままでは調理も困難で脱穀・籾摺りしなければ食べられないものの、保存が利き、播種することによって次の稲・米となって私たちが食することが出来ます。

「白米」は今を生きる人々の命の糧であって、「籾」は将来を生きる子や孫、そして未だ見ぬ子孫を生かす力を持っていると云えるでしょう。

「和稲」「荒稲」には、今を生かし、未来をも生かして頂きたいという祈りが込められてきたのではないだろうかと思います。

この命の連鎖とも云える和稲荒稲の関係を、現代社会に置き換えてみるといかがでしょうか?
私たちが生きている現在は、過去を賢明に生きてこられた先人達の、血と汗の結晶によって成り立っていると思うとき、私たちは子や孫、未だ見ぬ子孫へ「荒稲」にあたる将来を、未来を生かす糧を残しているのだろうか?という疑問に苛まれます。
余談になりますが、自然環境や保護を唱えるときに
「自然からは利息だけをもらって、元本には手を出すな」
と云います。
今日、農業従事者が減少し且つ高齢化している現状では、一方で食糧自給率向上が声高に叫ばれているにもかかわらず、確実に食糧自給率は減少の一途をたどることとなるでしょう。
諸外国を眺めてみましょう。
先進国と言われる国ほど、農業立国と云えるほど食糧自給率向上に力を入れてきましたし、入れている現状があります。

農業とは国家の柱なのです。

日本には「米3年の蓄えあって国家、9年の蓄えあって太平の世」という古い喩えがあるそうで、深く頷けるものです。

本質は野菜や魚肉類を含まない、穀類の生産量ベースでの食料自給率向上が重要で、日本など一部の国々で用いられている「カロリーベース換算による食料の自給率」は小手先の目くらましに過ぎません。

『どれだけ取れて、どれだけ残っているか』

つまり「生産量」を基準に、今年の『利息(余剰)』を来年にまわし貯蓄し続けることが重要と云うことです。
さらに、我が国の米を含む穀類だけをとっても、自給率100%にほど遠い現状では、『元本』の食いつぶしに他なりません。

それに加えて世界規模での人口の爆発的増加によって、食糧不足は今後加速すると云われている中で、「買えばいい、輸入すればいい」という考え方は非常に危険だと云わざるを得ません。

一次産品はつねに他産業と比較され、工業製品優先の政策で犠牲となり続けた結果が、 今日の農業にまつわる現状を生み出してきました。
確かに、工業製品の我が国経済に及ぼす割合は大きく、その享受によって私たちの生活が豊かになって来たことも事実です。
しかし、このまま進めば我が国は食糧需給のバランス崩壊によって収縮し、国家的な危機を迎えることも想像に難くありません。

この事は世間を賑やかせている『TPP:環太平洋戦略的経済連携協定』とも密接な関係がありますが、長くなりますのでここでは控えます。
しかし、日本は歴史をふり返ると、諸外国の理不尽な要求を突きつけられてもなお、国家を振興、興隆させてきた事実があります。

この歴史に鑑みても、

「現状維持から来る収縮を選ぶのか!?」
「農業を振興し将来を生かす方途を模索するか!?」
日本は今、大きな岐路に立たされているように思います。

いま申し上げてきたことは、けして農家を甘やかすことではなく、生産と収穫の喜びが実感でき、安定した生産量と穀類ベース自給率100%以上を確保するためにも真剣に考えるべき事柄だと思います。

さらに、農業が自然環境に与える影響は大きく、自然を守るためには農業を振興することが最善の策であるとも云います。さらに経済効果に至っては、たとえば水田の持つ水源涵養能力(田植えから稲刈りまでの期間)などを金銭換算すると単位一年間でも莫大な金額になると聞き及びます。

「命の根」を語源とする「稲」
「立派な骨」に支えられていることを意味を有する「稲穂」
「田から生まれたもの」を語源とする「宝」 など、
沢山の言葉を「お米」は生み出してきました。
そして、今日まで多くの「命」を誕生させる名脇役としても私たちの傍らから離れることはありませんでした。

平成23年の今年、日本は東日本大震災を皮切りに天災が生じさせた人災(人知の脆弱性)と、台風12号、15号の災害によって有史以来の国家、国土危機を迎えています。

これは、神さまの「立ち止まり足下を見よ!」との啓示と感じます。
子孫に日本の未来を残す、最後のチャンスを与えてくれているのかもしれない、と強く感じさせられています。

私たち神主が祭祀、祭を通して祈ることは、

『
我が国が磐石で子孫に確りとした「日本」を残し託したい、させて下さい』

それだけだと云うことです。

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