神風連につてお問い合せをいただきました。

※ 神風連:「しんぷうれん」と読みます

こちらには神風連の簡単な解説を掲載しております
https://isemiyasan.jp/special.html

下記駄文は平成18年に熊本市内の某企業の会報に寄せました記事に、加筆、修正を加えたものです。ご参考に供すれば幸いです。

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『国家の道義を護る』

「明治の礎 神風連」130年の節目

新開大神宮 太田黒義國

ご存じですか?
我が国「日本」は世界中でも稀有で長大な、およそ2000年以上の連続した歴史を持つ国家で、建国以来の根本理念「道義」が重んじられて来たことを。
そして、この価値観は今日もなお脈々と息づいていると云うことを。

「皇国は道義の国である」
ただ、この一筋をひたすら墨守しようとした明治九年の変。
明治維新以来、新しい国造りを掲げて船出した新政府の「西欧化政策」つまり国家的大変革は、国家の基礎を築いてきた「伝統文化」を破壊するだけに止まらず、国民の道徳心をも瓦解へと導いておりました。
この「道義の退廃」を憤り、その回復を一心に神明に祈り、「宇気比(うけひ)(注1)」によって決起した志士達の多くが神職であること、死者124名中87名が自刃であることなど、他に類例を見ない事変。これが、「神風連(しんぷうれん)の変(へん)」です。

今日、「神風連」と聞いてどれくらいの方々がご存じなのでしょうか?
かつて、熊本が誇る「日本史的出来事」と評価され、熊本の郷土史家荒木精之氏を筆頭に、三島由紀夫氏も調査研究し記された、名作「豊饒の海」第二巻「奔馬」におさめられる「神風連史話」。さらに先年放映されたハリウッド映画「ラスト・サムライ」の原型と言われる「高貴なる敗北(アイバン・モリス著)」は、交流のあった三島氏に指摘忠告をうけた著者が、日本人と西欧人を精神面から比較し編まれた名作として有名で、序文に神風連が紹介されております。
神風連の遺構としては、熊本市黒髪五丁目の「桜山(さくらやま)神社と神風連資料館」ここには彼らの魂と共に志士の遺品を目にすることが出来ます。そして、神風連発祥の地、熊本市内田町の新開大神宮では、実際に彼らが額ずいた拝殿(元文二年 1737建立)や、志士の奉納による絵馬「蒙古襲来の図」など、魂と精神に直接ふれることが出来ます。他にも熊本城周辺など、たくさんの記念碑等が残されており、今日では三島文学から、ラスト・サムライから神風連と出会い、熊本を訪れる旅行者も少なくありません。
当宮でも、誘われて訪れた旅人と出会い、お話する機会に恵まれると多くの人が感動されます。が同時に、嘆息をも漏らされます。「なぜ熊本の人々は神風連を知らないのか」投宿先で神風連をたずねても「誰も知らない・・・」などと。

さて、彼らが、必死に守ろうとした「皇国の道義」とは何か?
我が国の歴史・伝統・文化から形成される日本の「国柄」つまり、「日本国家の本来の姿」を守ることで、むずかしい言葉では「国体の護持」と云います。「国体(こくたい)」には、「国柄」「国の体裁」「国家体制」という意味があり、外国語では「憲法」の同義語とされるほど、一国を象徴する大切な言葉(理念)なのです。

当時の進歩的な日本人はもとより、人々に蔓延していた盲目的な西洋崇拝全盛真っただ中にあって、江戸時代の国学者「本居宣長翁」から列なる学問、つまり日本古来の「道」を学ぶ「国学」を最重要とされ、止まらず当時のあらゆる学問から芸術までをも修められた碩学「林櫻園(はやしさくらその)翁」に導かれ、「惟神」こそ、日本人が歩むべき正しい道であると、実践に努めたのが太田黒伴雄(おおたぐろともお)を首領とする「神風連」、正しくは肥後敬神党(ひごけいしんとう)の人々です。

世の中は唯(ただ)何事もうちすてて神を祈るそまことなりける

林櫻園

起きていのり伏してそ想う一筋は神そ知るらむ我が国のため

太田黒伴雄

これらの和歌には、神明も重んじ至誠をつくす心が溢れていると言えるでしょう。

さて、この神風連の思想と事変の淵源を探ってみますと、太田黒伴雄が十七代目の宮司をつとめた新開大神宮創立(文安元年1444年)の由来、厳かな伊勢信仰の実践者、初代宮司太田黒孫七郎(おおたぐろまごしちろう)まで溯ります。
それは、初代宮司の長きにわたる伊勢神宮への参拝・崇敬により、ついには伊勢神宮の神さまが夢枕に立たれ、当大神宮を創立させた経緯です。
「強い信仰心、且つ自らが行動する実践」この両輪が創立させた大神宮を、最もうやまい崇拝した林櫻園(はやしさくらその)翁の、先に紹介した和歌に見える「神を祈る」つまり「神に祈る」のではなく、「神を」という「を」から滲み出る意志の強さが忖度されるように、初代宮司から林櫻園、太田黒伴雄ほか神風連へと列なる強い信仰心と、実践的な信仰は、遥かに時空を超えて共通しております。

四方を海に囲まれた恵み豊かな我が国は、他国と比べて国境・領土・民族などの紛争、外圧を国民が肌で感じ、ましてや危険にさらされることなどまれな、絶好の地勢条件を得て、国民はことさら、国家に対する帰属意識やアイデンティティーを持たずとも平穏に暮らしてゆける環境を享受してまいりました。
しかし、我が国を取り巻く情勢は思いの外厳しく、有史以来幾たびもの国難を乗り越えてなお、これまでのように安穏とはしていられない因子が表面化してきており、国家観や民族観、つまり「国家の道義」を意識し実践することが求められて来ているように思われます。
我が国「日本」が、いかに恵まれた自然の要害に守られていようとも、国内において秩序道徳の崩壊が著しく、さらに凄惨さを極めた事件が後を絶たない現在。
おそらく史上最悪の道徳の崩壊、道義の危機を迎えているものと考えられます。

“国家の道義を護る”
この一筋に、身を挺して立ちはだかった神風連の決起以来130年。
彼らの気高い精神は、道を見失い、彷徨(さまよ)える現代人が学ぶべき「生かされて生かす」国家百年の「道標」ではないのでしょうか?

(注1)宇気比 うけひ(い)と読む。
古典に散見する言葉で、物事の可否、善悪を神々の判断に委ねる事で、神事を伴う場合が多い。

 

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